紅葉、開花、結実。盆栽は神秘のネイチャーワールド。

「盆栽」は四季を通じ、樹種によって様々な顔を見せます。
涼やかな葉や紅葉を楽しむ「雑木盆栽」
花を楽しむ「花もの盆栽」
花が実へと変化する「実もの盆栽」
松など常緑針葉樹を用いた「松柏(しょうはく)盆栽」
その他、苔や山野草、オリーブやハーブ等々ちょっと変わったものまで、盆栽として身近で楽しみたい植物は多くあります。

こちらのコーナーでは、盆栽に初めて挑戦する方でも比較的簡単に世話ができ、かつ、1年を通じて観賞価値が高いと思われる樹種を幾つか選定しました。
勿論、ここで選んだもの以外にも、素晴らしい姿を見せてくれる樹は沢山ありますし、どんな樹に愛着や興味を持つかは、人それぞれです。

まずはファーストステップ。「盆栽ってどんな樹があるのかな」と気楽に写真を眺めてみて下さい。
多分、樹の種類や表情は想像以上に豊かでしょうし、そんな樹と一緒に暮らす生活を想像しただけでもワクワしますよ。

ニレケヤキ(葉もの)

すっくと立つ胴体に若緑の小さな葉が涼やかな雑木です。秋、葉は黄色く紅葉し、落葉。葉の無い裸樹姿も風情があります。
春、新芽がゆっくりゆっくりと葉を開いていく様は、小さな赤ん坊が握りしめた手のひらをほどく様を連想させ、また、くるりと丸まった新芽が可憐な花のようにも見え、とても可愛いです。
管理も比較的簡単で、初心者におすすめの樹種です。

カエデ(葉もの)

春の新芽、夏の盛緑、秋の紅葉、冬の寒樹姿と四季折々の風情を楽しむことが出来ます。3つの切れ目が入った葉はカエデならではで、その葉が四季に応じて変遷していく様は、とても情緒があります。
丈夫で萌芽力や発根能力も強い樹種ですので、強い剪定や針金成形を施し、いろいろな樹形に仕立てることも可能です。
少し失敗しても回復力が高いため、初心者の剪定練習用におすすめです。

モミジ(葉もの)

モミジといえば秋の紅葉ですが、春、小さな赤い花がとまったような芽だし、夏、青々と茂った葉の下の緑陰、そして冬、葉が全て落ちた後の裸樹姿もとても見応えがあります。日本の四季の風情を最も強く感じる方も多いのではないでしょうか。
初心者でも管理がしやすい樹ですが、夏の強い日差しには要注意。葉焼けし、せっかくの紅葉が楽しめないこともあります。梅雨が明けたら風通しのよい半日蔭に移動させて下さい。(※半日蔭とは、午前中日が当たっても午後は日陰になるような場所です。建物の東側や木陰が適しています)

コウチョウギ(花もの)

小さな白や薄桃の花と光沢のある葉が可愛い常緑樹です。花は4月半ば頃から6月末頃まで咲き続けます。
強い寒気にあてると葉は半落葉しますが、基本的には冬になっても葉の緑を楽しむことができるので、年間を通じて観賞価値が高いです。
丈夫で暑さ寒さや虫にも強く、花も容易に咲くので、初心者にお勧めです。挿し木も成功率が高いため、剪定した枝を挿し木し、新しい株を増やす楽しみもあります。

レンギョウ(花もの)

早春に咲く黄色い花が鮮やかなレンギョウです。
でも、レンギョウの魅力は花だけでなく、その幹や葉姿も個性的に作ることができます。
花が咲くのは1年のうち、1~2週間程度とわずかですが、花が無い間は、葉姿を眺めながら次の春を首を長くして待つ。
そんな楽しみ方ができる樹種です。

ヒネム(花もの)

真っ赤でふさふさの花(雄しべ)と、柔らかく小さな葉が印象的なヒネムは、触ってもとても柔らかく可愛らしい樹木です。
花は4月頃から先始め、枝の先端に次々と花芽をつけては、翌年の1月頃まで咲き続けます。
ヒネムはネムノキとは異なる属ですが、一方、ネムノキと同様に暗くなると葉が閉じ、朝にまた開きます。
暑さには強いですが寒さには弱いので、気温が8度を下回るようになったら太陽がたっぷり当たる室内で管理して下さい。

シロシタン(実もの)

5月頃、可憐な白い花を咲かせた後、結実。最初は青かった実がやがて色づき、秋には真っ赤なリンゴのような実へと変身します。
実は12月頃まで楽しむことが出来、常緑ですので実がなくなった真冬でも葉は落ちません。
基本的な管理だけで花が咲き、実になるので初心者向きです。発根力があるので挿し木も容易で、剪定した枝を挿し木で増やす楽しみ方もあります。

コトネアスター(実もの)

たわわに実る赤い実が嬉しいコトネアスターですが、実がなる前の春に開花する白い花も可憐。かつ常緑性のため葉が冬の間も落ちず、年間を通じて観賞価値が高いです。
ツル性で匍匐するように伸びる枝は柔らかく、針金で思い通りの形に誘引することも簡単です。
暑さ寒さに強く、丈夫で花付きも良いため、初心者にもお勧めです。

ピラカンサ(実もの)

赤い実や橙黄色の実を付けます。濃い色の葉の陰から、色鮮やかな実が鈴なりに垂れる様は、冬の間の景色を華やかに彩ります。
実がつく前の初夏に咲く白い花は、小手毬のように密集し華やかで、実が色づく秋とはまた異なった美しさを楽しませてくれます。
暑さ寒さや病虫害に強く初心者向けの樹種ですが、枝に棘がありますので、手入れの時に邪魔になるようでしたら、棘の元から切り除去しても大丈夫です。

クロマツ(松柏)

くねくね胴体が可愛いクロマツです。松ならではのシンボリックな葉は、モダンな空間にもよくマッチします。
クールな鉢と合わせると、男性的なスタイリッシュさを、海外の植物のように飾ると異国情緒あふれる無国籍的雰囲気を醸し出し、クロマツの空間演出能力は高いです。
暑さ寒さに強く丈夫で初心者でも育てられますが、クロマツならでは芽摘みや短葉用を覚えると、さらに楽しみが増します。
基本管理をマスターしたら、ぜひチャレンジしてみて下さい。

ヒノキ(松柏)

建物の建材など、古来より日本人の生活に欠かせないヒノキですが、小さな盆栽に仕立てても日本古来の良い風情が出ます。
葉は鱗状に重なって伸び、ボリュームある葉冠になるため、小さな樹でも深山の大木のような趣ある景色を作ることが出来ます。また年数が経つと幹肌が荒れ、古木の雰囲気も楽しむことが出来ます。
丈夫で病虫害にも強く、手入れも簡単なため、初心者でも大丈夫な樹種です。
同種にサワラやヒバ、近縁種にはコニファーもあり、いずれも盆栽に仕立てることが出来ます。

オリーブ シルベストリス

濃いグリーンの小さな葉が盆栽向きの貴重な品種です。実はなりませんが、一年中いきいきとしたグリーンの葉を楽しむことが出来ます。
小さく仕立てることでオリーブとしてのイメージやストーリー性が増し、また、洋風に空間を演出することも可能で、今の住宅環境にとてもマッチした存在なのではないでしょうか。
暑さ寒さに強く、成長も比較的ゆるやかで枝が伸びる速度も遅いため、剪定も最小限で済みます。